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2007/02/08

Pepiteの美的な日々:気の利く店員

 ここ数年仕事の関係でお世話になっている美人の友達の誕生日が間近に迫り、おしゃれな彼女へのプレゼントを何にしようかと悩んだ末、アクセサリーを贈ることにした。
 といっても、読者はすでにご存知のように、私のようなアウトドア系野生人に、垢抜けた美人へ贈る装飾品など選べるはずもない。
 そこで私が頼るのは、いつものように親友の mimi ちゃん。この手のことは mimi に任せておけば、まず間違いないのである。
 さっそく相談をもちかけると、「あのひとはいつも・・・・系の感じのものが多いから、・・・・なんかが似合うんじゃない? まあ、・・・・もいいけど、洋服の感じからは・・・・のほうが合ってると思うよ」と、何やら難しい分析をして、ファッション雑誌のページをめくり、いくつかの例を指し示してくれた。
 そうでございますか mimi 様、すべてあなたにおまかせします! と、私はひれ伏して、二人で買い物に出掛けることなった。

 いつもはエスカレーターに向かう通路に過ぎないデパートの一階の気取った店舗の中に足を踏み入れ(未開の地のジャングルに踏み込むほうが私にはずっと似合うだろう)、mimi のリードに従って、品物を見て回った。どの店でも、私を客とみなして接してくる店員はいなかった。お客様はあくまで mimi であり、私などはまったく重要でない場違いな付属物のように無視された。(この日は野外スポーツの後着替える時間が無く、私が普段に増してくたびれた服装だったことも関係したはずだ)。
 mimi と店員の会話が弾み、蚊帳の外で退屈していた私が違うコーナーへ一人でふらふらと足を向けると、別の店員が寄ってきて「プレゼントをお探しですか?」と、感じの良い口調で訊いてきた。店員の言うとおり、確かに私はプレゼントを探しにやってきたわけだが、このおねえさんには、私が自分の買い物をするために来ているのかもしれないという考えは、まったく浮かばなかったようだ。
 おねえさんの言葉にうなずくと、「どういった感じのものをお探しですか?」と続けられ、私は mimi から聞きかじりの言葉のいくつかを自信なさげにつぶやいた。
 「だったら、これなんかどうですか?今限定品の・・・で、雑誌でも人気があるし、・・・・風だからどんなお洋服でも・・・・で、無難だしお洒落だし、これなら・・・・・ですよ(等等)」と熱心に語りながら、候補の二つの品物を見せてくれた。
 それがはたして友人へのプレゼントにふさわしいものなのか、私にはわかりかねたが、こうも真剣に考えてくれている店員に対して、すげない態度をとるわけにもいかず、この場を逃れるには、何か小さな(安価な)ものでも買うほかないだろうという気持ちになりはじめていた。
 助けを求めるように mimi のほうを見ると、彼女は鏡の前で自分の首に売り物のネックレスをつけて、店員とおしゃべりを続けていた。いつのまにか自分自身の買い物に移行していて、私のことなど忘れてしまっているにちがいない。
 私を捕獲した店員は、いまや最後の一押しという感じで勢い込んできた。友人へのプレゼントはもう一度友人に好みを確かめてから選びます、と言えばいいだろうかと私は考えた。そしてこの場を逃れるために買わなければならない品物として、少なくともこの店では一番低価格でありそうなキーホルダーしかないだろうと思うのだった。私の部屋の鍵につけたキーホルダーはずいぶん古いし、無駄な買い物というわけではないと、自分に言い聞かせながら。
 だが、すんでのところで mimi が間に合った。さっと私の腕を取り、「他に考えているものがあるので、後でまた寄ります」と、手際よく店員をかわし、次の店へと向かった。
 そこでようやくプレゼントを買うことになったのだが、mimi と店員のやりとりの終わりあたりで、「これでいい?予算は大丈夫?」と私に問いかけた mimi の言葉で、本当の購入者の存在に気づいた店員は、「どうですか?」と、はじめて私のほうを向いた。
 私がその品物について何かを(何だったか忘れたが)質問すると、その内容が店員にはおかしかったらしく、mimi と目を合わせて笑い、二人の間に親密な連帯感のようなものが生まれたことが、私にはなぜかはっきりわかった。
 支払いを済ませ、きれいに包装された品物を、さらに紙袋におさめる時、店員が私に話しかけてきた。
 「今、・・・万円以上お買い上げのお客様には、非売品のオリジナル装飾品を贈呈していますが(と、アンティークな手鏡のようなものを差し出して)、このおまけはプレゼントに一緒に入れておきます? (その後店員は視線で mimi を示し)それとも、彼女のほうに?
 私がおまけをもらうという選択が最初から排除されていることに驚きを感じはしたが、私はすぐにもこの二者択一の答えを出さなければならなかった。mimi が黙って私を見つめ、決断を待っていた。
 「それじゃあ、彼女のほうに」
 もちろん、そう言う以外にはないだろう。

 こうして買い物を済ませると、店員は二度と来ることがなさそうな私より、次には自分の買い物で訪れてくれそうな mimi に余計に愛想良くして、私たち二人を見送った。
 「感じのいいひとね」と mimi が言った。
 「そう?」
 「気が利くわ」
 「そうかな・・・」
 それから私たちは新装オープンのカフェで軽い食事をして(そこでも mimi は記念品をもらい、ついでに私の分も奪い取り)、仲良く家路についた。
  

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コメント

こんにちは^^

私も友人の誕生日とかにアクセサリーを良くあげます。
今の流行って言うより、その人の雰囲気に合うものを選んであげます。
アクセサリー選びは結構自分で言うのもなんですが、自信があります。
なんて言っても自分の趣味のひとつがアクセサリー集めなので。w
ネットで探すのもアクセサリーが一番多いです。
今はほとんどネットで購入しています。
そのほうが選ぶ範囲も広いし、結構珍しいものとかあったりして。^^

アンティークな手鏡のようなものって気になりますね。w
でも、お金を出したのはpepiteさんなのに、彼女のほうに渡すと聞く店員さんは、なんか変。
まあ手鏡くらい、選んでくれた方のお礼ってことで。w

投稿: Diane | 2007/02/13 18:18

>Diane様

アクセサリーといえば、Diane様ですね。
素敵なコレクションのいくつかを何度かmixi等で見せていただきましたが、
ああ、お洒落なひとだなと毎回思います。
Diane様の生み出す作品にも、同様なこだわりのあるセンスを感じ、とても憧れを感じています。
私は贈り物にアクセサリーを選ぶことなんてほとんどないのですが、
今回はどこかにDiane様の影響があったように思うんですよ。
身近にいればきっとアドバイスをお願いしたでしょう。(というか、選んでもらったでしょう)。
そしてもちろん、おまけの手鏡はDiane様のものになっていたでしょう(笑)

投稿: Pepite | 2007/02/15 08:11

Pepiteさん 
いつものようにマンガ喫茶でこの記事を読み、店内にも関わらず大爆笑してしまいました。
ごめんなさい。
申し訳ないがほんと面白い。
ある意味失礼な店員ですね。でもほんと笑ってしまいました。ごめんなり。
もうそれしかコメントできません。
意味のナイ コメントでこれまたごめん。

投稿: ぼふ~ | 2007/02/19 18:47

>ぼふ~さん

マンガ喫茶で憩いのひとときを過ごされたようですね。
私もそろそろマン喫で「王家の紋章」の続きを読まなければ(笑)
売り子に弱い私は(すぐに言いくるめられる)、
mimiの助けがなければ買い物にも行けません。
mimiの都合が悪いときは、ぼふ~さんについて来てもらいましょう。
どうぞよろしく♪♪

投稿: Pepite | 2007/02/20 10:01

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